あれは22年前、阪神大震災での出来事でした。

私はあるレストランで働いていました。震災後、店舗でバイキングのみのメニューを無料で提供することになりました。
ボランティアです、周辺にすぐに噂は広まり開店と同時に満席になって繁忙期以上の忙しさでした。

店舗はバイキングメニューを無料開放しているのですから大赤字でした。しかし、オーナーもスタッフも「被災者のため」という思いが最優先になっていました。お客さんは自然と被災者の方達だけになりました。被災していない人たちはお店の被災者に対するお店の対応に配慮したんだと思います。

お客さんの中には着のみ着のままの人もいて、避難生活をしている人がほとんどでした。
そんな善意だけで運営していたお店に、歓迎されないDQNカップルが現れ事件が起こります。
やたらと身綺麗でジャラジャラとアクセアサリーを着けた若い男女が入ってきたのです。

その異質な男女の客は店内で好き勝手をし被災者に嫌な思いをさせます、その時、予想もしなかった事が起きたのです。




入って来た若い男女は、使い捨てカメラで店内を撮影し「ギャーギャー」騒ぎ立てていました。
皆が列に並ぶ中「早く案内しろよ」とせかし、席につけばビールやパフェを持ってくるように
スタッフに言いつけます。

見かねたご老人が興奮気味に「観光できたのなら帰ってくれ!」と声を荒げても「カンケ~ねえよ」「何か言ってる~」とまったく相手にせず、居直っていました。

さすがに私も血が頭に上って「申し訳ないですが出て行ってもらえますか」と言った瞬間、私の肩を叩いて前に出てきた男性がいました。男性はシャツのボタンを外し、胸の刺青を見せながら若者たちにこう言いました。「おい、にいちゃんら、はよ、お家に帰ってテレビでも見とかんかい!!!!」

彼らは黙って席を立ち国産高級車で去っていきました。その反社的な容貌の男性は「店員さんは喧嘩しちゃいけないよ、それはワシらの仕事だから」「ごちそうさま」と言いながら店を出ていきました。

その男性のホコリまみれの上着、ひび割れたサングラス、緩くなったパンチパーマ、そして足を引きずりながら歩いて行く姿。「あなたは、今日は街のヒーローです」そう言ってあげたかった。

出典元:hitomoti