『兄妹の情』

8,449 views


『兄妹の情』

ファミレスで珈琲飲みながら仕事をしていると…
隣のテーブルに、親子が座ったんです。

妙に若作りしてる茶髪のお母さんと、
中学一年生ぐらいの兄、
そして小学校低学年ぐらいの妹です。

まあ、どこにでもいる家族連れだなあ
ぐらいにしか思ってなかったのですが……
驚きました。

母「ほら! 早く決めなさいッ!
  ったく、トロいんだから!」

お母さんが、デフォルトでキレてるんですよ。

子どもがなにをしても、怒鳴りつけるんです。

妹「それじゃ、わたしカレーにするー」

母「そ。わかった」

妹「わたし、カレー好きー」

母「うるさい!!
  そんなこと聞いてないでしょ!!」

ちょ、カレー好きって言っただけじゃん!
なんで、怒鳴るんだよ?!ヽ( `Д´)ノ

お兄さんの方は、
もうこのお母さんに呆れてるのか、

無表情でそっぽ向いたまま、
一言も喋ろうとしません。

注文を決める時もメニューを指さしただけ。

関わり合いになるのを、
極力控えているみたいです。

料理が届いてからも、
お母さんはキレっぱなし。

妹「いっただきまーす」

母「黙って食べなさい!」

妹「……ショボーン(´・ω・`)」

兄「…………」

ただカチャカチャと鳴り響く食事の音。

さっさと自分だけ平らげた母親は、
タバコ吸いながら
ケイタイをいじり始めました。

はぁぁ~やるせねぇ(‘A`)

すると突然、妹が
明るい顔をして口を開いたんです。

妹「あ、そだ、お母さん!聞いて聞いてっ!
  あのね!えとね!
  今日ね、学校でね、とってもいいことが……」

母「うるさい!食べてる時は騒がないの!
  周りの人に迷惑でしょ!」

って、ちっとも迷惑じゃないよ!
うるさいのは、アンタだよ!

そのコの話、聞いてあげてよ!

怒鳴られてびっくりした妹が、
カレーをテーブルにほんのちょっと
落としちゃった…

母「あーもー汚いな!
なんでちゃんと、食べられないの?!
綺麗に食べなさい!綺麗に。

あーもームカツク!!」

烈火のごとく、怒る母。

そんなに怒るほど、
こぼしてないだろー?!ヽ( `Д´)ノ

妹「うう…ごめんなさい……」

ブツブツ文句いいながら、
母親はケイタイをいじくっている。

妹は涙目。

兄は一言も喋らずに、黙々と食べてる。

まるでお通夜みたいな
雰囲気に包まれたテーブル。

こんな食事、楽しいはずがない。

すると。母親のケイタイが鳴り始めました。

母「ちょっと、お母さん、電話してくるから。
  サッサと食べちゃってね」

そう言い残して、
ケイタイ片手に母は店から出ました。

電話するヒマがあったら、
我が子としゃべれよ!

子育てを経験するどころか、
恋人もいない僕には
言う資格がないけど、それでも言いたい。

もうちょっと、子どもとの
接し方ってもんがあるだろ。

それじゃ、あまりにも可哀想だろ。

子どもがグレてからじゃ
遅いんだぞ、ゴルァ( `Д´)

と、隣のテーブルで、
私はキレまくっていたんですが……

次の妹のようすを見て、怒りも吹き飛びました。

そのコは涙目のまま
一生懸命カレーを食べてたんです。

お母さんの言いつけを守りたいから、
ゆっくり食べていたら怒られてしまうから……

味わう余裕もないぐらい、急いで食べてた。

でも、もともと食べるのが遅い子なのでしょう。

焦っているからか、口の周りを
べそべそに汚してしまっていて……

きっと、それをまた怒られてしまうのに、
それすらも気付かずに必死にカレーを
かき込んでいるんです。

目にいっぱい涙を溜めて。

一生懸命に。

あぐあぐ。

もうね、この世には親子の情はないのかと、
寂しい気持ちになってしまいましたよ。

あんなお母さんはやめて、
お兄さんチの子になれとそう言って
抱きしめてあげたくなったほどです。

そのとき一言も喋らなかった兄が
ボソッと言ったのです。

兄「……そんなに急がなくてもいいよ」

妹「え?」

兄「ゆっくり食べな」

妹「で、でも……お母さんが」

兄「いいから。好きなんだろ、それ」

妹「うんっ」

兄はチラッと母親が出て行った
出口の方を確認しつつ…

兄「で? なにがあったって?」

妹「???」

兄「学校でいいことあったんだろ」

妹「う…うんっ! あのね! 
  えとね! 今日学校でね!」

妹は、楽しげにしゃべり始めました。

他愛もないことだったんですが、
とっても嬉しそうに。

きっと、聞いてもらえるだけで
嬉しいんでしょう。

さっきまで涙目だったのに
満面の笑みを浮かべています。

兄は、にこりともせずに
話を聞いてあげていたのですが、

兄「そっか。良かったな」

と言って妹のべそべそになった口元を
拭いてあげたのでした。

親子の情は見えなくとも、
兄妹の情はちゃんとありました。

きっと、この二人は
まっとうに育つと思います。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

この母親には怒りを覚えましたが、

素直で明るい妹と、無口だけど
優しく妹を見守るお兄ちゃんに
ほっこりしました。

たしかにこのまま二人、助け合って
生きていけば、まっとうに育つでしょうね。

でも、お母さんが立ち直ってくれれば、
もっと幸せな家庭を築けるのに…

妹を気遣うお兄ちゃんの為にも、
そう願わずにはいられません。

  • LINEで送る

人気ランキング

人気のキーワード

PAGE TOP ↑