「ぼくをみつけて…わたしをみつけて…。」
何万何千もの人々が行き交う大都会の人ごみの中、ひっそりと悲しげに、そのポスターは存在しています。
そこに描かれているのは、どれもこれも子どもが膝を抱えてうつむき、不安そうな眼差しで立ち尽くし、声をあげて泣き叫ぶ姿…。

これは2016年11月21日から30日までの間、JR大阪環状線の各駅構内に貼り出されたポスターやステッカーです。
どの駅に貼られているポスターもステッカーも、柱の陰や階段、エスカレーターの隅、消火栓の横など、人目につかない死角に掲示されていますが、いったいなぜ?

その目的は「子ども虐待防止」を呼びかけるためだといいます。

現代の深刻な社会問題である「子ども虐待」防止のシンボルマーク「オレンジリボン運動」の一環として今回JR西日本が協力したもので、電車の車体がオレンジ色をしている大阪環状線の全19駅にわたって、ポスター200枚とステッカーを約150箇所に貼り出しました。

駅構内に貼られているポスターはもはやその存在が当たり前すぎて、見向きもしない人も多いでしょう。
でもそんな中にあって、あえて人々が目線を向けにくい場所を選んで貼ったのは、子ども虐待問題に潜む『気づかれにくさ』の実態を訴えかけるためです。

不名誉な事に大阪地区は、全国の児童虐待相談対応件数の約1割を占めています。
その身も凍るような虐待の実態とは…。

1、殴る、蹴る、水風呂や熱湯の風呂に沈める、刃物で切る、アイロンを押し付ける、首を絞める、ベランダに吊るす、厳冬期に戸外に閉め出すなどの暴力的な「身体的虐待」。

2、子どもに性的な行為を強要したり、性器や性交の場面を見せたりする「性的虐待」。

3、大声を出して脅す、無視や拒否的な態度をとる、兄弟間の差別をする、気持ちを傷付ける暴言を吐く、または父親の母親への 暴力を子どもに見せつける「心理的虐待」。




4、子どもを家に残して外出する、食事を与えない、衣服を着替えさせない、学校に行かせない、パチンコに熱中して子どもを自動車内に放置するなど、育児義務を怠る「ネグレクト」…。

…とても人間のやる事とは思えません。

また、親や子どもの生々しい虐待体験談もあります。

「息子が2歳の頃からそのわがままに耐えきれず、ぶったりけったりが始まって、かわいいときとにくたらしいときがものすごいギャップのある生活でした。私自身がパニックになって息子をビンタしているときは、このまま本当に殺してしまうのではないかと思っていました。完全に子どもと対立して、子どもを負かすために殴っていたと思います」(虐待をした事のある親)

「母は感情が高ぶると姉と私をたたいたりけったりしました。小学生になると、父が姉と私に性的ないたずらをするようになりました。私たち姉妹は口止めされ、誰にも言えずにいました。それが5年ほど続き、いまも両親は夫婦でいます」(虐待をされた事のある子ども)

…今や1週間に1人の子どもが虐待で命を落とすとされ、「オレンジリボン運動公式サイト」によると、死亡事例は年間50件を超え、さらに児童虐待相談対応件数は24年間で約80倍に増加していると言います。

いつもそばにいる親からの虐待に、子どもはSOSを発する事が出来ません。
親は当然それを隠しますし、そうなれば他人から見れば「子煩悩な親」「仲睦まじい家族」としか見られない事も『気づかれにくさ』の原因でしょう。

駅に貼られていたあのポスターを見た、ある女の子からの感想…
「見つけた時にどきっとした。にげたい、という言葉が、たすけて、あいしてって言ってるようにも見えた。」
…それは、子どもだけでなく、親も誰かに「たすけて、あいして」ほしいのかもしれません。

「オレンジリボン運動」は呼びかけます。
「駅でこのポスターを見かけたら『#わたしを見つけて』を付けてSNSに投稿してください。みなさんに拡散していただく事で、より多くの人に、子ども虐待の深刻さや予防に向けた関心を高めていただきたいと考えています。」

出典元:feely